ロルフィングは、米国で生まれた手技療法です。
アイダ・ロルフ博士(1896〜1979)によって考案されました。
アイダ・ロルフは1896年にニューヨークで生まれ、コロンビア大学の医学部で生化学の博士号を取得した研究者でした。
ロックフェラー財団でしばらく研究を続けていましたが、家庭の事情でそこを辞めました。
しかし、研究熱心な彼女はその後、A・スティルによって開発された、主に背骨を中心とした骨格矯正の技法あるオステオパシーを学び、ホメオパシー、カイロプラクティックなどを幅広く研究し、とりわけ、ヨガからは深い影響を受けました。
転機は1940年頃で、ケガで思うように動けなくなったピアノ教師の腕を治したことから、彼女の仕事がスタートしました。
このワークは、最初、ストラクチュラル・インテグレーション(Structural Integration)とされていましたが、博士の名前にちなんで、ロルフィングの愛称で呼ばれるようになりました。
なお、ロルフィングは、世界三大ボディワークの1つとして説明されることもあります。
ボディワークについてはこちら
ロルフィングとは(概要)
ロルフィングは、治療ではなく、身体教育として位置づけられています。
身体教育と言っても、たいがい身体に働きかける施術が中心に行われ、その後、トラッキングなど身体の教育が行われます。
身体の構造(姿勢)と動きの質の改善が主な目的です。
■身体の構造(姿勢)の改善
■動きの質の改善
姿勢の改善というと、日本では、カイロプラクティックが知られていますが、これは主に骨の構造に働きかける技法です。
脊柱が正しい位置にあれば病気は起こりにくいという考えがあり、力を加えることで関節の位置や動きを調整します。
これに対して、アイダ・ロルフは、カラダの変化を保つためには、骨の位置を戻すだけでは不十分だと考えました。
本来、可動性のもった骨の組織をかたち作っているのは、骨の周りの軟部組織、いわゆる筋肉、腱、靱帯といったものであり、そこに働きかけない限り、変化は一時的なものと解釈しました。
つまり、骨を正しい位置に戻しても、短く圧縮された筋肉やそれに関連した組織を伸ばさなければ、骨はまたずれてしまう、と考えたのです。
もちろん、実際の現場では、双方を明確にわけて働きかけないと思いますが、大きく特徴を捉えるならば、このような違いがあります。
ロルフィングとは(主な特徴)
ロルフィングの主な特徴は、以下のとおりです。
前述したように、ロルフィングは、軟部組織(筋肉、筋膜、靱帯、腱など)に働きかけるのが大きな特徴です。
この軟部組織のことを、「筋膜」と呼びます。
最近では、「筋膜リリース」「筋膜はがし」など、筋膜という呼び名も多く使われるようになってきました。
ロルフィングのセッション(ロルフィング®・ストラクチュラル・インテグレーションと言います。略して、SIと呼ばれる事もあります)では、この筋膜に働きかけることで、優れた結果を導き出します。
筋膜は、筋肉の周りを覆う膜だけではありません。
筋肉はもちろんのこと、身体中のあらゆるものを包み込む、互いに入り組んだ結合組織です。
写真は、その筋膜(結合組織)です。
赤みの肉、鶏肉などを切ったときに、透けて見えるほどの薄皮上の物質を目にしたことがあるかもしれませんが、それが筋膜です。
身体のあらゆるものをつなぎます。
身体の中のネットワーク組織または、詰め物のようなイメージで捉えることもできるでしょう。
実際のロルフィングセッションでは、何層にもわたる結合組織(筋膜)を、表層から深層にかけて、徐々に解放していきます。
最初の3回のセッションまでは主に表層部分を、4回以降では深層部分を扱うのが基本です。
こうして段階を踏むことによって、大きな成果が期待できます。
私たちの身体は常に重力の影響を受けています。
一方、私たちは偏った生活習慣や加齢などによって、体の構造(姿勢)に歪みが生じることがあります。
事故による怪我、あるいはストレスによる緊張がもとで心身のバランスを崩すこともあります。
こうしてバランスを失った身体は、常に重力と闘い続けることになり、結果として、身体のコリや痛みを感じるようになると考えられています。
そこで、セッションを通じて、重力に対し抵抗がなくバランスがとれた身体を目指します。
バランスが取れるようになると、多くは身体の痛みが和らぎ、軽快で優雅な動きもみられるようになっていきます。
更に、ロルフィングは、基本的には10回のセッションで構成されています。
各セッション、テーマが異なりますが(下記参照)、ここで我々施術者(ロルファー)が手がかりにしているのが、レシピと呼ばれるものです。
レシピは、アイダ・ロルフが彼女の経験してきたこと、見ていることの全体性を、我々に把握させるためのツールのようなものです。
そのレシピを手がかりに、我々は10回のセッションを、クライアントの状態に合わせて組み立てていきます。
回を重ねるごとに変化を積み重ね、ロルフィングのゴールである「統合」へと向かうよう構成されます。
なお、10回のセッションを、「10シリーズ」と呼ぶことがあります。
《ロルフィング10回セッションと、それぞれのテーマ》
(1)胸郭の動きを取り戻し、深い呼吸が楽に出来るようにします。
(2)足の構造的なアーチを引き出し、大地に足がつく感覚を目覚めさせます。
(3)体側部の確立。前後・左右のバランス、空間の広がりを引き出します。
(4)骨盤底の解放。ミッドラインを確立します。
(5)腹部(内臓空間)を解放し、腸腰筋を活性化します。
(6)背骨、仙骨を自由にします。
(7)頭部、頚部のバランスを整えていきます。
(8)姿勢と動きの統合Ⅰ(上半身または下半身のつながりをつけていきます)
(9)姿勢と動きの統合Ⅱ(上半身または下半身のつながりをつけていきます)
(10)各部の水平性を確立し、全身の統合を図っていきます。
なお、ロルフィングの効果(変化)は、個人差はあるものの、セッション終了後も続き、身体バランスの改善効果が数年にわたって持続すると言われています。
ロルフィングの効果
ロルフィングを受けるとどんな効果が期待できるのでしょうか。
世の中には健康に導くための様々な主義療法がありますが、大きく3つに区分されると言われています。
第一パラダイム* ⇒ リラクゼーションを目的にしたいわゆるマッサージなど
第二パラダイム ⇒ 治療、治療として行われる医療の分野、外科的な手術など
第三パラダイム ⇒ 全体的な調和、肉体的(構造的)、機能的な心身の統合
(*パラダイム・・物の見方、捉え方)
このうち、ロルフィングは、第三パラダイムに属します。
つまり、厳密に言えば、身体のコリや緊張、痛みを取り除く「治療」が最終ゴールではなく、その先を目指します。
とはいえ、ロルフィングのゴールでもある「統合」についての解釈は、私たち施術者(ロルファーといいます)の間でも恐らく微妙に異なっています。
そこで、私個人の考えはリスティック医療(療法)の考えを参考に、こちらのホリスティックケアの記事に記載させていただきました。
また、ロルフィングを、構造、機能、スピリチュアル(精神性)の3つの側面であると言われています。
そのため、次のいずれかを期待してロルフィングを受けるケースが多いと思われます。
《ロルフィングにどのような効果を期待しているか?》
■身体の構造の変化 ⇒ 身体の歪みや姿勢の改善、 (身体の緊張、歪みからくると考えられる)肩こり、首こり、背中の痛み、腰痛などの症状の緩和など
■身体の機能の改善 ⇒ 呼吸の質の向上、スポーツ、ダンス、ヨガ、歌、演技、楽器演奏などのパフォーマンス向上、
スポーツ時のケガの予防、日常動作の改善など
■スピリチュアル ⇒ 自己(真実の自己)に対する気づき、自己成長、精神面の健康
また、ロルフィングの効果については、こちらでもご紹介しております。
更に、ロルフィングを体験された方からの感想は、こちらでご紹介しております。
(参考)日本ロルフィング協会HPなど
ロルフィングは、どのような人たちが受けているのか?
上記の「ロルフィングにどのような効果を期待しているのか?」にありますように、主に3つの目的で受けられている方が多いように思います。
当サロンには、アスリート、音楽家、俳優さんなどの職業の方もいますが、働き盛りの男性、女性の(男女比はおおよそ50%、50%)一般の方が多くいらっしゃっています。
仕事が多忙であったり、責任ある立場で、カラダを酷使して来た人たちも目立ちます。
整体やマッサージ等、あらゆるところに通った経験をお持ちの方がほとんどです。
転々といろいろな所に通ううちに、根本からカラダを整える必要性を感じて来られる方もいらっしゃいます。
または、首の痛み、背中の激痛などで、助けを求めるようにしていらっしゃる方もいます。
将来の自分のカラダを考えて、ヨガやピラティスなど始めたものの、カラダが硬くてついていけない、スポーツ時の痛みや怪我の予防を目的にいらっしゃる人もいます。
プロのアスリートではないものの、将来の自分のカラダに投資するつもりで受けられる方が多いように実感しています。
当サロンのお客様についていえば、「ご自分のカラダへの意識」が高く、カラダを人任せにしないことが、大きな共通点かもしれません。
ロルフィング 沿革
アイダ・ロルフ博士は、米国コロンビア大学で生化学の博士号を取得した後、彼女自身の問題や家族の健康についての問題の解決に費やす日々を送っています。
そうした中、オステオパシー、ホメオパシー、カイロプラクティック、ヨガなどの様々な手技療法を研究したとされています。
そして、軟部組織に働きかけることによって、身体の部位を本来あるべき位置に戻し、身体のバランスを整える技法を提唱しました。
前述したとおり、体の構造(姿勢)と動きを、「重力」とのバランスで考えたこと、また、筋肉や内臓など、あらゆる器官をとりまく「筋膜」に注目したことが、大きな特徴とされています。
彼女は、慢性的な障害を持つ人たち等、多くの人たちに施術を行い、この施術が後に、Structural Integration(構造統合)として知られていくようになります。
彼女の理論と技術は、レシピと呼ばれる10段階のセッションで構成されるマニュアルとしてまとめられました。
当初は、医療従事者である生徒を中心にに伝えられましたが、後に、医療従事者以外にも、解剖学、生理学などを習得した上でロルフィングの技法が伝えられるようになりました。
エサレン研究所を通じて、ロルフィングに関する研究が行われました。
そして、UCLAのValerie V.Hiunt氏らの調査により、科学的にもロルフィングの効果が明らかにされました。
1971年には、米国コロラド州のボルダーに、ロルフ研究所が設けられ、ロルフィングの普及と施術者の養成が行われています。
また、米国以外でも、ドイツ、ブラジル、オーストラリアなどでは施術者養成のためのトレーニングが実施されています。
なお、ロルフィングは、創始者の名前に因んで名付けられた愛称でしたが、1979年に、ロルフ・インスティテュートによって商標登録されています。
現在では、米国、南米、ヨーロッパをはじめとして世界80カ国以上で施術を受けることができます。
ロルファーとは
ロルフィングを行う施術者をいいます。
米国ロルフ研究所(The Rolf Institute® of Structural Integration)が定める履修規定にもとづくトレーニング(unit1〜unit3)を受講後、認定を受けたもので、日本において活動する場合には、日本ロルフィンング協会に所属することが義務づけられています。
現在、日本では常設のトレーニング養成学校は存在していませんが、過去に東京、京都、横浜で開催されたことがあります。
日本以外では、世界各国の幅広い地域で開催されています。
なお、ロルファーの認定には、Certisfied Rolfer(サティスファイドロルファー)と、Advanced Rolfer(アドバンスロルファー)があります。
Advanced Rolferになるためには、サティスファイドロルファーの認定を受けたあと、クレニオ、マニピュレーション、ムーブメントにおけるそれぞれ一定の単位(クレジット)を取得後、アドバンストレーニングを受けて認定を受ける必要があります。
また、これとは別に、Rolf Movement Practitioner (ムーブメントプラクティショナー)の認定もあり、ロルフムーブメントをセッションの中で行う場合に必要とされています。
ただし、ムーブメントプラクティショナーの認定は単独では取得できず、サティスファイドロルファー、またはアドバンスロルファーが併せてムーブメントプラクティショナーの認定を受けて、活動を行っています。
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